【多職種で実現する食べる支援】ペヤングを魔法に変え、“食べる喜び”と“生きる力”を呼び覚まします
その方がまちだ丘の上病院に入院されたのは、2023年の冬のこと。
77歳の女性でした。入院時は鼻からの栄養と点滴で命をつないでおり、言葉を交わすこともほとんどできないほど、全身の力が弱っていました。
それでも私たちは、少しでも回復の兆しを信じ、毎日点滴治療とリハビリに取り組んでいました。
そんなある日、思いがけないほど力強い声で――
「やきそば、食べたい!」
私たちは驚きました。
これまでほとんど言葉を発することがなかった方の、初めての“願い”だったのです。
詳しく話を伺うと、その方は長く一人暮らしをされ、元気なころはよくカップ焼きそばを食べていたとのこと。
中でも「ペヤング」が大のお気に入りで、いくつかのメーカー名を挙げて確認すると、「ペヤング!」と目を輝かせながら大きな声で答えてくれました。
しかし、その当時の嚥下機能(飲み込みの力)では、麺類を食べるのはとても難しい状態。
それでも――「どうにか食べさせてあげたい」
医師、言語聴覚士、看護師、栄養士など、さまざまな職種のクルーが集まり、知恵を出し合いました。
麺を長めに茹でて柔らかくし、短く切る。ソースの味を少し薄めて、飲み込みやすくする。
小さな工夫を重ね、ついに“特別なペヤング”が完成しました。

そして、その日。
テーブルの上に置かれたカップを前に、ひとくち、口に運ぶ。
その瞬間――
ふっと笑顔がこぼれ、止まらなくなりました。
「おいしい」「もっと食べたい」
その言葉に、見守っていたクルーたちの目にも涙が浮かびました。
その後、患者さんはリハビリにも前向きに取り組むようになり、少しずつ元気を取り戻されました。
あの日の病室には、患者さんとクルーたちの笑い声が響き、「乾杯!」ならぬ「カンペヤ~!」の声があがりました。
小さなカップを掲げたその笑顔は、まるで人生の喜びを取り戻した瞬間のようでした。
ペヤングは、ただの焼きそばではありませんでした。
それは、“食べる喜び”と“生きる力”を呼び覚ます魔法のような一杯だったのです。
私たちは、まるか食品様のペヤングがこの方の人生に、そして私たちの心にも灯をともしてくださったことに深く感謝しています。
あの日の「カンペヤ~!」の笑顔を胸に、これからも私たちは、一人ひとりの「食べたい」という想いに寄り添いながら、より良い医療とケアを届けていきたいと感じた物語でした。